
今回は、相手の車が跳ね飛ばした小石によって自分の車のフロントガラスやドアガラスが割れてしまった場合は交通事故扱いになるのか否か、また、飛び石被害を受けないための予防策はあるのか、さらには一見同じ被害形態でも犯罪に該当して来てしまうケースなど、元POLICEMANのわたくしけたろーが超詳しく説明していきます!
わたしは現職時代、「飛び石」によって車のフロントガラスやドアガラス、リヤガラスが割れてしまったという110番通報の現場に何度か臨場したことがあります。
何の前兆も無く突然に車のガラスが割れ、運転手は非常にびっくりしてしまうこの「飛び石」による事案。
この記事を読めば、「飛び石」による事案が「交通事故」になるのかどうか、さらにはその対処法まで全てがわかります!
この記事はこんなお話
飛び石で車の窓ガラスが割れることなんてあるの!?
車で走行している時、車体に「カツっ」「ピシっ」と音がして、何か小さな硬いものがぶつかったような衝撃を受けたことは無いでしょうか?
おそらく普段から車を乗っている人であれば、幾度となくそのような経験はしている事と思います。
そう、それこそ「飛び石」なのです。
地面に落ちていた小石が、その上を通りすぎた車のタイヤに巻き込まれ、タイヤの回転する力によってピストルの弾のように勢いをつけて巻き上げられるんです。これが車体にぶつかった音が「カツっ」「ピシっ」という音です。
車体部分であれば下地に金属が使われていますので、多少傷がついたりへこむことはあっても割れることはありません。しかし、フロントガラスやドアガラスは違います。
ガラスは、尖った物で力強く叩かれることで簡単に割れてしまいます。接触する面積が小さくても、ガラスの耐久度を超える力で叩けば割れてしまうのは承知の事実でしょう。
飛び石によって窓ガラスが割れるのがまさにこれなんです。飛び石と言う面積が小さいけれども高速で飛んでくる物体と衝突することで、車のガラスが簡単に割れてしまうんです。
実際に、わたしが現職時代に取り扱った飛び石事案では、飛び石がぶつかった方の車のガラスが蜘蛛の巣状に割れ、甚大な被害を被っておりました。
では、そんな思いもよらない被害をもたらす「飛び石」ですが、果たして飛び石によって被害を受けた場合、交通事故扱いにはなるのでしょうか?そして、万が一このような事態に陥った時の対処法は!?
飛び石で車の窓ガラスが割れても、交通事故扱いにはならない
結論から申し上げますと、飛び石によって車のフロントガラスやドアガラスが割れてしまったとしても、交通事故扱いにはなりません。
つまり、「単純に運が悪かった」と言う事になります。
交通事故の定義とは、「車両等の交通による人の死傷または物の損壊があったときをいう」と道路交通法第67条で規定されています。
一見すると「車のガラスが割れたんだから、物の損壊があっただろうがよ!」とお考えになるかもしれませんが、基本的に交通事故と言うのは、一般的に目視によって楽々認識し得るものに対して誤って接触してしまった時に、いわゆる「過失」が発生して交通事故となります。
あなたは車で道路を走行している時、道路に落ちている数ミリから数センチ程度の小石を一つ一つ目視して認識していますか?
そんなのいちいち認識していませんし、目視もできませんよね。
つまり、車の運転手は誰しも、自分の車が小石を巻き上げて他人様の車を傷つけるなんて言う事は一切想定していないって言う事です。
つまり、小石を跳ね飛ばしてしまった行為と言うのは、「過失」にすら当たらず、それが当たって車が損壊した場合は、残念ながら「運が悪かった」と捉えるしかないのです。
石を跳ね飛ばした相手がわかったとしても、相手を責めることは出来ない
一般的な飛び石被害は、どの車のタイヤが小石を跳ね飛ばしてきたかを特定するのも極めて困難です。
純粋に自分の車の周辺に他の車がいればいるほど困難です。
そして、飛び石によって万が一フロントガラスなどが割れてしまった場合、その車の運転手であれば驚いてすぐ止まると思いますが、相手の車は小石を跳ね飛ばした認識が無いわけですから、普通にそのまま走り去っていきます。
特に、自分が渋滞にはまっている時に対向車線を走る車から弾き飛ばされた小石がぶつかった場合などは、相手は確実に走り去ります。
そう考えると、どこの誰ともわからないもの同士が行き交う「道路」という場所で、数ミリから数センチ程度の小石を跳ね飛ばした車を特定するのは事実上「不可能」です。
飛び石被害に遭った運転手の車にドラレコなんかが付いていて、自分の周りにはその車以外全くおらずに、明らかに「小石を跳ね飛ばしたのは、もうその車しかいない!」と断定できるような状況であっても、交通事故扱いや賠償請求は不可能です。
それはなぜか。先ほど申し上げたとおり「相手が、道路に落ちていた小石の存在そのものを全く認識していない事」が一点と・・・
ぶつかったモノって、本当に小石なの?
という疑問が生じてくるからです。
極論、相手の車が跳ね飛ばしたのはパチンコ玉かもしれませんし、プラスチック片かもしれません。超小型の隕石かもしれませんし、別な誰かがどこかからぶん投げた木の実かもしれません。
飛び石による被害は、ガラスに接触して跳ね返り、そのままどこかに行ってしまいます。よほどの高速度で衝突・貫通しない限り、ぶつかった物が車内にまで到達することはありえません。そう考えると、何がぶつかってガラスが破損したのかを特定するのはまず不可能です。
とはいっても、やはり「相手の過失ですらない」のですから、相手が仮にわかったとしても交通事故扱いにはなりません。
飛び石被害を受けないための予防策
舗装された道路を走る上で、飛び石被害を受けないための予防策は一つしかありません。
それは「誰も走っていない所を走る」!もうこれしかありません。相手が小石を跳ね飛ばすからこのような事態になるのです。つまり、相手がいなければ絶対に飛び石事案は発生し得ないのです。
ですが、誰もいない所を走り続けるなんてできるわけありませんし、予防策に現実味がありません。
よって、敢えて言うならば、砂利を積んだダンプカーの後ろは絶対に避ける、といったところくらいしかないのが実情です。
田舎でよく見るような未舗装な砂利道であれば、相手の車の真後ろを走らないなどの対策を取ることは可能です。
「故意犯」は別!「わざと」は立派な犯罪になりうる
注意しなければならないのが、わざと小石などを車めがけて投げつけてくる「故意犯」です。
例えば、誰かが道路脇から走行中の車に対して小石を投げつけていたとか、道路に架かる陸橋や歩道橋の上から意図的に小石を落としていた、なんていう場合は話は別です。
その場合、これは立派な「犯罪行為」です。
相手の車を傷つける目的で小石等を投げつけていた場合は「器物損壊罪」。
小石をぶつけた車が驚いて重大事故を起こし、運転手が最悪死傷してしまう可能性があり、そうなることを予見していた場合は最悪「殺人未遂罪」なんかに問われる可能性だってあります。
事案の態様によってその他様々な犯罪に該当してくるケースがあります。
こういうバカなことをする輩は、多少なりとも存在します。実際にわたしもそんな事件を経験をした事があります。わたしが関わったのは、道路に架かる歩道橋の上から走ってくる車に対してゴミを投げ落とす輩に関する事件でしたね。
被害を受けた側からすると、飛び石被害も故意的に小石をぶつけられた被害も、被害状況は似たような具合になりますが、その陰に潜んでいる加害者の「悪意」という面では雲泥の差があります。
飛び石で車のガラスが割れた場合の対処法
それでは、飛び石によって車のガラスが割れたと想定して、万が一の時の対処法をお話していきます。
一般道でフロントガラス全壊またはヒビ
まずは、一般道を走っていたら、突然フロントガラスが粉々に砕け散り全壊してしまったケースです。
この場合、いきなりフロントガラスが粉々になるので、運転手は相当驚くことになります。
フロントガラスの破片は車内に散乱し、運転手の膝の上などにも大量に降り注ぐことになります。
この場合の理想的な対処法は、まず徐々に減速させ、車を路肩に付けます。
路肩に付けたらハザードランプを点灯させ、三角形の停止用器材を車両後方に設置し、「ここに止まってるよ」と言う事を後続車にアピールします。
ガラスによる身体の負傷が無いかどうかを確認し、保険会社に連絡を取り、レッカーを要請しましょう。車内がガラスまみれなので、その状態での車の運転はかなりの危険を伴いますので止めておきましょう。
また、車両交通量の多い場所でこの状態に陥った場合は、110番通報をして警察官の臨場を要請しましょう。交通整理に当たってもらうためです。
その後の車両の修理代金は、保険会社と話し合えば如何様にでもなります。
飛び石によりフロントガラスにひびが入った程度であり、走行するのに支障がないくらいの視認性を確保できるのであれば、最寄りのコンビニ等の駐車場まで移動して、そこから保険会社に連絡を取り、レッカーを手配しましょう。
フロントガラスにひびが入っている状態での車の継続走行は危険ですので、安全な場所に移動した後は、保険会社を経由してレッカーにて移動するようにしましょう。
高速道路でフロントガラス全壊またはヒビ
高速道路を走行中、飛び石によってフロントガラスが全壊してしまった場合の措置をお話します。
まず、車を路肩に寄せて停止させます。
ハザードランプを点灯させ、発煙筒を炊いて後続車に異変を知らせます。
発煙筒を炊いた後、三角形の停止用器材を車の後方に置き、車から急いで離れます。←超重要ポイント!!
車から離れたら110番通報して状況を説明します。110番通報することにより、警察経由で高速道路管理者に連絡が行きます。
そこまで措置を講じた後で、保険会社に連絡しましょう。
注意すべき点は、高速道路で停止する際は、車の中に残っていてはいけません。追突されて重大事案になる可能性があります。
フロントガラスが全壊で無くてヒビ程度であったとしても、継続走行をしないことを強く勧めます。
突然フロントガラスにヒビが入って気が動転しているでしょうし、第一、視認性の確保が難しくなり危険が増加しますので、上記と同じ対策を講じるようにしましょう。
一般道・高速道路でそれ以外のガラスが全壊またはヒビ
フロントガラス以外のガラスが全壊してしまった場合も、基本的に上記と同様の措置を講じておけば間違いはありません。
ただし、ヒビで止まったのであれば、視認性に問題が無い限り走行を続けてもらって差し支えないです。ただし、ヒビといってもグラグラして路上にガラス片が落下しそうな状態であったりした場合は、他車に危害を及ぼす可能性があるので走行は控えましょう。
おわりに
よくお分かりになっていただけたでしょうか?
よって「飛び石で車のガラスが割れたんだけど」と110番通報をされたとしても、事故対応としては基本「泣き寝入りしてください」としか言えないのです。
しかし、飛び石でガラスが割れたことによって車両通行量の多い通りや高速道路上に停止せざるを得ない状態になってしまったのであれば、交通整理のために警察に通報するのは十分に可能であり、ぜひ通報して危険防止措置を講じてもらいたいものです。
車の修理に関しては、飛び石による被害にも使える保険もありますし、保険会社が臨機応変に応じてくれると思います。
飛び石被害は、結局のところ全てが「運」です。
この記事の内容を、万が一の時のために頭の片隅にちょろっと覚えておいてくださいね!
以上でーす!