
今回は、元POLICEMANであるわたくしけたろーが、タクシー運転手の皆さんがよくお客さんとして乗車させるであろう「酔っ払い」の対処法に関するお話をいたします。
わたしが現職だった頃、よくタクシーの運転手から110番通報が入り、事案対応に向かっていました。
タクシー運転手から110番通報が入るのは、決まって夜。
そりゃそうですよね、酔っ払いと 何かしらのトラブルに発展するのは、お酒が入りやすい夜の時間帯ですからね。
タクシー運転手から入る通報は主に「酔っ払いを乗車させたんだけど、泥酔していて全く起きません。何とかしてください」というものや「乗車させた酔っ払いがグダ巻いて絡んできます。何とかして下さい」「酔っ払いが料金の支払いを渋っています。何とかしてください」などというものです。
タクシー運転手としたら、どうしようもない酔っ払いでも一応お客さんですからね。乗せないわけにはいかないのでしょう。
そんなわたしの過去の経験を活かし、タクシーの運転手に対して泥酔者の対処法を事案別に解説していきます!
前提として、酔っ払いを相手にする場合、万が一何かトラブルになった時は真っ先に警察を介入させるべきなので、その部分は押さえておきましょう。
この記事はこんなお話
客の目的地に着いたが、泥酔していて起きない場合
「客が泥酔して起きない」と一言で言っても、実際はそんな単純なものではありません。
単純に寝ているだけなのか、悪酔いしていて疲労困憊な状態なのか、それとも急性アルコール中毒に陥っていて一刻を争う事態なのか、まずはこの部分の判別をしないといけません。
それを判別するには、声掛けは必須です。
タクシー会社の中には「必要以上にお客さんには話しかけません」ということをモットーとしているタクシー会社もあるようですが、時と場合によることは言うまでも無いでしょう。
相手が酒臭くて、社内でぐったりしているようであれば、「お客さん!」「お客さん!」と大きめに声を掛けましょう。
声掛けの結果、わずかに反応を示す程度の場合
「お客さん!」と声を掛けた結果、それに応じて「・・・う~ん・・・」と眠そうに何かしらの反応を示した場合は、その状態が続いている限り目的地まで運転していって大丈夫でしょう。
アルコールの影響で眠くなっているか、ちょっと悪酔い気味だけど何とか耐えてこらえている状態であることがほとんどです。
ただし、気を付けないといけないのが、声掛けに関係なくウンウン唸っている場合です。この場合は、具合が悪すぎてぎりぎり耐えている状態である可能性があります。
その様な状況の時は、冷静になって客観的にその状態を見て、あなたが救急車を要請する必要があると判断した場合は、相手の意志にかかわらず119番通報しましょう。
この場合、結局何でも無かったとしてもその判断は決して間違いではありません。結果オーライです。
怖いのは、客観的に相手を見てヤバいと感じたのに救急車も呼ばず、事態が急変して相手が急性アルコール中毒等の症状が発症、命の危険に陥ってしまった場合です。
声掛けをしたけど、ピクリとも動かない場合
次は怖いパターンのお話です。
声掛けをした結果、返事も無く、体もピクリとも動かない場合はかなり注意が必要です。
この場合は、車を路肩にでも止めて、客に対してゆすりながら大きめに声を掛けましょう。
声掛け「お客さん!大丈夫ですか!?」「お客さん!!」&体ユサユサをしてみましょう。
ぐっすり熟睡してるのであれば、これをされるとイヤイヤながらも覚醒してきます。
問題は、声を掛けても体をゆすっても全く反応が無く、寝息すら聞こえないような「違和感を覚える意識の失い方」をしている場合です。
急性アルコール中毒等、体に変調をきたし急速を要する可能性があります。
その場ですぐに救急車を要請し、病院に引き渡しましょう。
こんな場合の料金の支払いのことなどは、おそらくタクシー会社で規定されているようですから、まずは料金の支払いのことよりも相手の命を優先してあげましょう。
事実、わたしも現職時代にこのような「全く反応しない酔っ払い」をたくさん相手にしました。
警察としては、酔っぱらってどうしようもないような輩は、大体強制的に保護して警察署の保護房にぶち込み、朝になって酒が抜けるまで泊め置くのですが、全く反応しない酔っ払いは非常に危険です。
ヘタに保護などしたものなら、保護房の中でお亡くなりになっていたなんていう可能性もあるからです。
こういう特徴のある酔っ払いは、すぐさま病院に搬送したほうがいいのです。
乗車させたが、泥酔しており行き先がはっきりせず、ラチがあかない場合
これも良くあるパターン。
乗車させろと言ってきたため乗車させたものの、行き先を聞いても具体的な住所等を示さず、「だぁ~からよお~、わかるだろ~」なんて訳の分からない絡み方をしてくるのです。
タクシー運転手としてみれば非常に面倒くさい客のタイプのひとつですね。
こういう場合は、はっきりと「行先を伝えてもらえない場合は乗車をお断りします」ときっぱりと断ってください。
乗車を拒否したことを巡り、相手が必要以上に絡んでくるような場合は、「これ以上不必要に絡んできて業務を妨害するようなら、警察に通報しますよ」と脅しをくれてやりましょう。
そして、その脅しに屈せずにさらに絡んでくるようであれば、本当に110番通報して警察官の現場臨場を要請しましょう。
警察官を要請した場合、おそらくこの時点まで訳の分からないことを言って絡んでくるような酔っ払いは、間違いなく保護です。
保護事案です。強制的にパトカーに乗せて警察署に連れていきますから。
料金の支払いなどを巡り、泥酔した客が暴れ始めた場合
酒が入ると、普段は正常な判断ができる人がおかしくなります。
「もっと近い道があっただろう」とか「料金メーターが上がった直後に止まった。一つ前の料金で支払わせろ」などといういちゃもんを付けてくる酔っ払いも多数存在します。
悪質なものになると、後部座席から運転席をけ飛ばしたり(暴行罪)、手を伸ばして運転手を殴ったり(暴行罪または傷害罪)、いちゃもんを付けて料金を支払わず立ち去ったり(強盗罪)と、もはや立派な犯罪行為を行う輩もいるんです。
もし、乗車させた客が料金の支払いやその他の理由で突然暴れ始め、何らかの危害を加えられたり、危害を加えられるおそれのある場合は、まずすぐさまタクシーから降車しましょう。
そして、タクシーから一定距離離れ、客の動向を注視しながら迷わずに110番通報をしましょう。
こういう危害を加えられそうになった場合に、一番最初に守るべきは、売上金でも、タクシーの車体でもありません。
タクシー運転手の生命と体です。
タクシーから離れる所で大事なのが、きちんと客の動向を注視することです。
客の動向を注視せずに、客に背を向けた状態で電話を掛けることに夢中になってしまうと、110番通報をされることを恐れた客が、後ろから暴力的な行為に及んできたり、携帯電話を奪い取りにくる可能性があります。
つまり、不意打ちを食らわせられる危険性があるということです。
なので、必ず客の動向を注視しながら110番通報しましょう。
もちろん、客の動向だけでなく、自分の周囲の安全も併せて確認し、交通事故に巻き込まれたり、転倒したりすることの無いよう留意しましょう。
110番した後は、客から加えられた危害を元に被害申告し、然るべき処罰を受けさせましょう。
遠慮することはありません。酔っぱらって運転手に危害を加えてくるような輩は、もはや客ではありません。
刑罰法令と、社内規則による被害回復措置をもって相手に然るべき刑事罰と然るべき損害賠償を請求してやりましょう。
もちろん、こういうケースは相手が酔っぱらっていようといまいと、基本的な対処法は同じです。
おわりに
タクシー運転手と言う職業は、基本的に乗車させる客と一対一または一対複数という構図になることが基本であり、その状態でトラブルに発展した場合、危険に巻き込まれやすい職業であるともいえます。
しかも、客の中には「お前のタクシーに乗ってやってる」という「客意識」が非常に強い輩も存在するのが事実。
わたしは、タクシー運転手だから客に屈する必要は無いと思います。
だって、もちろん然るべき賃金はもらいますが、タクシー側も客を指示された場所まで運ぶんですから。
万が一の時のため、知識として覚えておいていただければと思います。
以上でーす!
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