
今回は、警察職員の「労働者としてのあり方」のお話です。
あなたは会社員ですか?
もしそうだとしたら、あなたの会社に「労働組合」ってありますか?
比較的規模が大きな会社にお勤めの場合、社内に「労働組合」とか「労組」とか「組合」なんて呼ばれるものが存在するはずです。
もしあなたの会社で、社長などの「使用者側」があなたたちのような「労働者」を不当にこき使おうとしたり、支払うべき賃金を支払わなかったりした場合、あなたの労働組合はこれに是正を求めたり、協約を結んだり、最悪労働そのものを放棄したりすることもできます。
この権利は「労働三権」と呼ばれるもので、お金を得て労働をしている人のみに認められている「労働基本権」と呼ばれる中の権利の一つです。
ほらね、だんだん中学校の社会科の授業のようになってきましたね(笑)
でも、、まだここからが本番ですよ!
警察官だってお金を得て労働をしている人ですよね?
もちろん、警察官にだって不当な組織の要求に反発して団体で交渉したり、仕事を放棄したりする権利が・・・え?ない!?
無いの!?
はい。ありません。
何で!?
「治安を維持する組織だから」です!
「労働三権」って、何?
労働三権(労働基本権)とは、日本国憲法により、このように規定された権利のことを言います。
一見すると「何のことですか?」という感じがします。
ですが、この一文のみで日本中で労働している人の「団結権」「団体交渉権」「団体行動権(争議権)」という権利を保障している、とてもありがたい文章なんです。
「団結権」「団体交渉権」「団体行動権(争議権)」の三つを合わせて、一般的に「労働三権」と呼んでいます。
では、それらの権利は具体的に何をどういう風に規定しているのか、それぞれ見ていきましょう。
労働者が経営者に対し,対等の立場で労働条件の維持・改善を目的とする活動を行うために,労働組合の結成や,これへの加入など自主的に団結する権利。
団体交渉権,争議権と並んで労働基本権といわれる。
日本では憲法 28条「勤労者の団結する権利」で認められ,それに基づいて労働組合法が制定されている。
組合結成・加入に対する使用者の報復や妨害などを禁じた不当労働行為制度は,団結権を具体的に保障するために設けられたものであり,またかかる使用者の行為は私法上も違法ないし無効となる。
つまり、労働内容に不満を持った個人が使用者側と直接交渉すると「個人vs使用者側」という状況になってしまいますが、労働者が団結して労働組合を作ることで、「労働組合vs使用者側」となり、後の交渉時に影響力を増すことができるわけですね。
さらに、労働者側の団結権の行使を妨害しようとした場合、使用者側のその行為が違法や無効になっちゃうってんですから、心強いですね~!
憲法で保障されている労働三権「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の一つで、賃金や解雇などについて労働者団体が使用者と交渉する権利。
労働組合法7条では使用者が正当な理由がないのに労働者代表との団体交渉を拒む行為を禁じている。
【引用:2008-12-11 朝日新聞 朝刊 2社会】
労働者側が団結権を元にして労働組合を作ったら、この団体交渉権を使って使用者側と労働条件などについて交渉できるんですねぇ!
しかもその交渉、使用者側は正当な理由なく拒むことができないとか!
交渉した結果、労働者側と使用者側は「協約」というものを結んで、これを明らかにしておくんだとか!
「交渉した結果、こうなりましたよ」という証拠が残って、何よりですね~!
労働者が使用者との関係において労働条件などに関する自己の主張を団結の力で貫徹するため,業務の正常な運営を阻害するストライキその他の争議行為を行う権利。
団体行動権の中核をなす。
団結権,団体交渉権と並んで一般に労働三権といわれるものの1つで,日本国憲法 28条において保障されている。
その結果,正当な争議行為は,威力業務妨害に該当する場合でも刑事上違法とされず (刑事免責) ,また組合または組合員は損害賠償を請求されることはない (民事免責) 。
さらに労働者は,不当労働行為の制度によって,正当な争議行為のゆえをもって解雇その他の不利益な取扱いを受けないよう保障されている。
争議行為の正当性は態様および目的から判断され,たとえば暴力的なピケットや生産管理などの争議手段は違法とされている。
公務員や国営企業・地方公営企業の職員は法律によって争議権を否認されており,その合憲性をめぐってきびしい対立があるが,最高裁は必要で合理的な制限であり,合憲との判断を下している。
つまり、団体交渉権を用いた使用者側との交渉で折り合いが付かなかった場合、労働者側が「俺たちの言うこと聞けねえんなら、こんな仕事しませーん」ってストライキを起こすことを認めた権利という訳ですねぇ!
しかも、ストライキして会社に様々な面から被害を与えても、損害賠償をされずに刑事事件にもならないって言うんですから最強です!
さらにさらに!ストライキをしても!、その社員をクビにできないって言うんですからなおさら最強ですよね!
こんな「労働三権」が、警察職員には一切認められていない!
労働三権の説明で、「こんな凄いことができるんだ~!」と感動した後に地獄に突き落とすようになってしまいますことをお詫びいたします。
そうです、警察職員にはこの「労働三権」が一切認められていないんです!
厳密にいえば、警察職員だけではありません。
警察職員のほか、自衛隊、海上保安庁、消防職員、刑務所職員も同様に、「労働三権」が一切認められていません。
職業の特殊性を考えるとおのずと答えが出て来ますが、警察や消防のように治安を維持して平穏を確保する仕事だったり、自衛隊や海上保安庁のように国家防衛や緊急時の要の仕事だったり、刑務所職員のように治安を維持するうえで重要な「犯罪者施設」を管理したりするような仕事は、日本が日本として存在し、日本社会の根幹を維持するには欠かせない職業です。
もし、警察が団体権を使って労働組合を作ったらどうなるでしょう?
警察が、団体交渉権を使って任命権者である都道府県知事に対して労働環境是正の交渉を持ち掛けたらどうなるでしょう?
犯罪捜査は昼夜問わないからすごく疲れる!拘束時間が長い!勤務環境が危険!臭い汚い事案が多い!えとせとら!エトセトラ!etc!!!
その挙句・・・
「結局何一つ受け入れてくれなかったよ~」「仕方ないな、○○県警察は、本日より一週間閉店ガラガラします!」
・・・その結果、
犯罪者による犯罪被害の横行!交通事故が起きても誰も事故処理に来てくれない!緊急事態なのに警察が来てくれない!
な~んてなったら、日本の終わりです。
警察とは、
24時間365日、そこにあって当たり前!そこに異論をはさむ余地なし!
緊急事態には総力を結集して事態対処に当たる!そこに異論をはさむ余地なし!
それが警察!
ということは・・・つまり、
black!
そう、ブラック!
・・・ブラックなんです泣
全ては「善良な県民・市民のため」でまかり通る
警察業務を遂行する上で、警察官に警察組織と交渉する余地は一ミリもありません。
だって労働三権が適用されないんですから!
つまり、上官が「右向け」と言ったら右を向き、「左向け」と言ったら左を向き、真っ黒いカラスを指さして「あれは白いだろ?」と聞かれれば「はい、白で間違いありません!」と言わなければならない、と言う事です。
あ、もちろん一般的に考えてあまりにもかけ離れている場合はパワハラとして訴えることもできますよ?
警察には監察室という組織を見張って正す部署がありますから。
今回申し上げていることはそういう具体的な事案的なものではなく、組織としての「運営方針」とか、その辺の話です。
一番理解しやすいのが、
「全ては県民のため!」「全ては善良な市民のため!」
といえば、なんでもまかり通ってしまうんです。
この魔法の言葉一つで、全国の警察官は警察組織に忠実に従わざるを得なくなり、どんな過酷な勤務環境でも精神論で「乗り切れ」と命令され、極限まで疲弊していくんです。
そんな「不当さ」をお金に転嫁しているから給料が高いと考えるのがベスト!
警察官の年収は全国平均で800万円を超えます。
地方の年収200万円代の低所得者層から比べれば、約3倍にもなります。
でも、それらの低所得者層の人たちには少なからず警察官以上の自由は間違いなく保証されています。
警察官には自由はありませんし、プライベートも申告しないといけないなど、全てが組織管理下に置かれます。
その上、労働三権もありません。
いや~、ブラックですね(笑)
でも、そんなブラックだからこそ給料が高いと考えるのはどうでしょう?
警察は不当さをお金に転嫁している、と考えれば、そこで働くのも悪くないのかもしれません。
福利厚生なんて最強ですしね。
ちゃんと夏休みと年末年始休暇もありますし。
要は、物は捉えようってことです。
おわりに
権利権利と、個人の権利ばかり主張されるご時世ですが、警察だけはこれからも今からもずっと、組織に過剰な権利を求めることはできないでしょう。
だからこそ、こう考えてみてください。
個人の権利を侵害してまで、国と言う守らなければならないもののために存在している職業、それが警察官、つまり聖職である・・・と。
確かに警察官の仕事は激務で、福利厚生は自分の物と言うよりは、自分が亡くなった後の身内保障のためにあるようなもんです。
でも仕方ない、それが現在の日本の警察官です。
国が正当にそのように規定している以上、どう頑張っても一個人にそれを覆す手段はありません。
選べるのは、あなたが警察官と言う職業に付くか否か、それだけです。
以上、社会科の授業終わり!!
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