
元POLICEMANけたろーがお送りする「元警察官が徹底的に教えるオレオレ詐欺」シリーズ!
前々回第一部では「オレオレ詐欺の根本を知ろう!」ということで、誰を名乗ってどのような心配事を吹っ掛けてこようと、オレオレ詐欺の根本部分の流れは同じであることを詳しく解説しました。
前回の第二部では、「被害者の心理状態」について、オレオレ詐欺ではなぜ高齢者がターゲットになっているのか、また、騙される過程においてどのような心理状態に陥るのかなどについて詳しく説明しました。
そして今回は、オレオレ詐欺に騙された被害者が、その大事な現金をどのようにして犯人に渡してしまうのかなど、現金が絡むところについて説明していきますよ!
「現金の受け渡し」は詐欺犯罪の最大の要所!
オレオレ詐欺に限らず、詐欺犯罪の最大の要所は何といっても「現金の受け渡し」にあります。
犯人にとって、いくら完璧に相手を騙せていても、実際に現金をその手に納めるまでは詐欺が成功したとは言えません。
相手を騙して、相手からお金を受け取って初めて、詐欺師にとって「儲け」が発生するのですから。
ただし、現金の受け取りにはかなりのリスクが付きまといます。
特に、オレオレ詐欺全般に言えることですが、あまりにも詐欺の名前や手法が有名になりすぎて、警察も相当過敏に反応するようになりました。
騙す手法もそうですが、現金の受け渡し方法についても、最初は単純に銀行口座への振り込みだったのに、それが世間に知れ渡るにつれ徐々に淘汰され、別な手法、別な手法と移り変わってきました。
そして現在、オレオレ詐欺の現金受け渡しは、数パターンに絞られている現状です。
「口座に現金を振り込んで!」の「振り込み型」もはや皆無!
オレオレ詐欺が世に知れ渡った最初のころ、被害者と詐欺師間の現金のやり取りは、主に口座への振り込みだったのです。
被害者が犯人に「○○の口座に振り込んで」と言われるから、「振り込め詐欺」という名前が付いたのです。
犯人側が、お金に困っている人に銀行口座を作らせ、その口座を買い取り利用する、いわゆる不正口座に振り込みは行われていました。
でも今はその手法はほぼ使われていません。
このご時世、金融機関でスマホや携帯をいじりながらATMなんて操作していた暁には、必ず職員から「オレオレ詐欺じゃないですか?」「振り込め詐欺に引っかかっていませんか?」と声を掛けられることになります。
例え、携帯を使っていなくても、金融機関の中でそわそわしているだけで職員に声を掛けられる時代です。
つまり、詐欺師にとって金融機関を経由しての現金のやり取りは、職員に未然に防がれたり警察に通報されるなど、あまりにもリスクが大きすぎる状態になってしまったんです。
そんな理由で、金融機関を通じて現金を入手しづらくなってしまったため、詐欺師が次に考えたのは「直接現金を受け取ってしまおう」という方法でした。

ただしこの方法も、犯人にとってはかなりのリスクが存在しています。
早速見ていきましょう。
詐欺の中核メンバーが現金を取りに来ることは絶対に無い
大々的に犯行を重ねているオレオレ詐欺の犯人グループは、大体が組織性となっています。
つまり、役割分担をして犯行を行っているということです。
「掛け子」とか「受け子」とか「出し子」なんて言う言葉を聞いたことがあると思います。
電話をかけて高齢者を騙しにかかる役割、いわゆる「掛け子」は、ひたすら電話をかけ続けるだけ。
受け取りに行く「受け子」は受け取りに行くだけ。
現在、高齢者の自宅に行って現金を受け取る役は100%アルバイトです。
犯人グループのマネジャー的な立ち位置の者に「〇万円やるから、○○に行って荷物を受け取ってこい」っていう指示を受け、その通りに行動しているアルバイト。
実際電話をかけてきた本人や、詐欺グループの統括的立ち位置にある者が直接お金を取りに来るなんて言う事は絶対に無いんです。
だって、高齢者宅にノコノコと赴いた結果、最終的に警察に逮捕されてしまったなんて言う事になったら、犯人からすれば笑えない話ですからね。
このアルバイトの受け子の存在が、オレオレ詐欺の現金受け渡しを大きく変えることになりました。
オレオレ詐欺の現金受け渡し方法
さて、ここからは現金の受け渡し方法について説明していきます。
犯人の口車にまんまと乗せられた高齢者が、実際に現金を犯人に渡してしまうケースをご紹介していきます。
受け子が自宅に取りに行く「手交型」
今、最もオレオレ詐欺の現金の受け渡しに使われている方法が、犯人グループに一時的に雇われたアルバイトが、騙された高齢者の自宅に直接現金を取りに行く「手交型(しゅこうがた)」です。
この方法は、犯人側にとって非常に大きなリスクが伴います。
そのリスクとは「高齢者が騙されたふりをして、警察を呼び寄せ待機させている可能性がある」ということです。
これが有名な、警察がオレオレ詐欺の受け子を検挙する方法として用いている「騙されたふり作戦」です。
オレオレ詐欺で現金の手渡しが行われるようになって久しい現在、この「騙されたふり作戦」に積極的に協力する高齢者も増えました。
犯人が騙そうとしていた高齢者に、逆に騙されて検挙されてしまうという、なんともザマミロな内容です。
高齢者の自宅に現金を取りに行く受け子と、実際に電話をかけてきている掛け子以上の犯人との間には、全く何のつながりもありません。
犯人側が、お金に困った学生やら、貧乏ニートやらを一時的に高額な報酬で雇った、というだけの関係です。
何のつながりも無いということは、受け子にとっては、雇い主がもどこの誰かなんていうことも当然知らないし、具体的にオレオレ詐欺の犯人グループだとも知らせません。
なんとなく「オレオレ詐欺グループだ」と臭わせる程度です。
犯人グループは、アルバイトの受け子に「○○に行って荷物を取ってこい。そうしたら〇万円やる。万が一警察に逮捕されても『知らない』と言って、勾留期限の20日間だけ我慢すれば、初犯なら起訴猶予で終わりだ」とだけ入れ知恵をして送り出します。
そのようにして、犯人グループがアルバイトの受け子に対して徹底的にその素性を隠すが故、受け子をいくら検挙した程度では、大元の検挙には行きつかないんです。
特定の場所に郵送させる「郵送型」
次に、現金を荷物や何かに紛れさせ、郵便局や宅配業者を経由させ、特定の場所に郵送させる「郵送型」です。
手交型に比べて、郵送型を用いられるケースは少ないです。
特定の場所に郵送させるが故、頻繁に郵送先を変えなければならないし、郵送先の契約等も足が付かないように行わなければならず、犯人側の手間が相当なものになります。
自宅近くに待ち合わせをし、そこで受け取る「待ち合わせ手交型」
主に自宅近くのコンビニの駐車場や、各種店舗の駐車場などに高齢者を呼び出し、そこで現金を受け取る方法です。
犯人側がなぜこのような手法を用いるのかというと、警察による「騙されたふり作戦」による検挙を免れるためという理由が一つ目です。
騙されたふり作戦では、主に警察は高齢者の自宅内に事前に潜むことになります。
そこで高齢者を自宅外に呼び出すことにより、高齢者の周りにいる人間が警察官でないか、犯人が遠目から確認できるように仕組むのです。
もし、高齢者の周辺に少しでも怪しい動きがあれば犯人は絶対に接触してきません。
わたしも現職時代、幾度となく騙されたふり作戦に参加しましたが、犯人の察知能力はとても鋭いものがあります。
二つ目の理由が、高齢者とアルバイト受け子との接触を容易にさせるためです。
犯人グループが犯行に及ぶ場合、その日に電話を集中して掛ける地域に受け子を派遣している場合がほとんどです。
なぜなら、せっかく電話をして高齢者を騙すことができても、肝心の受け取り役がいないのであれば現金を受け取ることができません。
そうなってしまっては本末転倒ですから。
受け子は、知らない地域に派遣され、土地勘が無く右も左もわからない状態です。
高齢者の自宅を探してウロウロしている間に、警察官に職務質問されて検挙されてしまう危険性だってあるわけです。
だったら、誰でもすぐわかる場所に呼び出して接触した方が危険性は低くなりますし、お互いにわかりやすいんです。
遠くまで呼び出し手渡しさせる「遠方呼び出し手交型」
完璧に犯人グループに騙され、洗脳された高齢者と、犯人グループとの物理的な距離があまりにも遠かった場合に用いられる方法です。
例えば、東京にいる犯人グループが北海道や沖縄にいる高齢者に電話をかけ、まんまと騙すことに成功した場合など、犯人グループが遠方で現金の受け取り行為を行うのは時間的・距離的に無理が発生します。
そんな時、「コイツをこっちまで呼び出して受け取っちゃえ」ということになった場合に、この方法が使われます。
この方法を主として行っている犯人グループも存在します。
すっかり騙されて洗脳されている高齢者であれば、「新幹線に乗って移動」とか、その程度の無理はすんなり受け入れてしまう傾向にあります。
新幹線はもちろん、高齢者によっては飛行機に乗ってまで指定された場所に向かおうとするんです。
え?そこまで!?って思うでしょ?
でも、そこまでしちゃうんです。
洗脳って恐ろしいものですね。
ごくたま~に、東京などの大都市のタクシー運転手が、タクシーに乗車してきた高齢者の様子がおかしくて話を聞いたところ、オレオレ詐欺に騙されていることが分かったので警察に通報し未然防止に貢献した、なんていうニュースはまさにこのパターン。
遠距離を移動し、その土地に土地勘のない高齢者は、あらかじめ犯人に場所を言われても大半がピンときませんから。
キャッシュカードと暗証番号を騙し取り引き出す「引き出し型」
ここ数年、警察官騙りで使われている方法がこちらです。
犯人はこともあろうに警察官を騙り「あなたの口座が振り込め詐欺に利用されている」とか「犯罪に利用されている」と突然電話をしてきます。
そして「今すぐ口座に入っている現金を移動させなければ大事になる」なんて言って、「あなたのキャッシュカード預かります」「暗証番号を教えてください」「これから自宅に警察官が伺いますので、それらを渡してください」なんて言って騙し取るんです。
そして、入手したキャッシュカードと暗証番号で口座内の現金を引き出すんです。
もちろん、この現金を引き出す役「出し子」も一時的に犯人グループに雇われたアルバイトです。
おわりに
犯人グループがどのようにして高齢者から現金を受け取るのか、十分にわかっていただけたと思います。
犯人グループも、相当なリスクを背負って現金を入手すべく試行錯誤を繰り返しているんです。
さて、第一部からこの第三部を踏まえて、いよいよお話します。
オレオレ詐欺被害を防ぐ根本的な方法を!!
高齢者がターゲットとなるオレオレ詐欺に関して、元POLICEMANであるわたくしけたろーから言わせれば、100%予防することが可能です!
その方法はとても簡単。
簡単な上、詐欺を予防するための根本部分を付いているときたもんだ!
そんな夢のような方法、知りたくありませんか?
そのお話は次の「第四部:詐欺を防ぐたった一つの方法!編」で!