
警察学校には、学生が主に担任教官に対して行う、人類史上最も勇気のいる自己申告制度が存在することをご存知ですか?
その名を「過誤報告(かごほうこく)」と言います。
今回は、警察学校生活を送る上で決して逃れることができない、この「過誤報告」について詳しく話していきますよ!
この記事はこんなお話
「過誤報告」ってなに?
過誤報告とは、その字のとおり「過ぎた過ちを報告すること」を言います。
つまり、「自分がミスったことを自ら教官に伝え、教官から強烈なお叱りをもらう」という、学生からしたら非常に過酷かつ残酷な制度です。
なぜこんな制度が存在しているのかと言うと、わたしの実体験から導き出した結論で申し上げます。
それは、
「失敗を隠さない、嘘を付かない(付けない)正直者の警察官を育てるため」
「小さな問題でも上司に伝え、組織に乗せて対応することで大事に発展させることを防ぐ、という訓練のため」
にこの制度があると考えるのが妥当です。
警察官が嘘つきだったら困りますよね?警察官は正義の味方ですから、正直である必要があるんです。
また、警察業務は組織対応が基本です。個人で発生させてしまったどんな小さなミスも隠さずに組織に乗せ、対応することが基本となります。
警察の業務は、個人情報を大量に含む極めて秘匿性の高い業務です。
例えば、捜査資料を一つ無くしてしまったとします。
「別にいいやそんなの」と放っておくと、例えば後で誰かが拾っただとか、写真に撮られてツイッターに乗せられたとか、そういう事態に発展した時に大問題になるんです。そして当然自分のクビも飛びます。
そうなる前に組織に乗せて対応することで、捜査資料に乗っている個人情報の相手方の被害も、警察側の信頼喪失も最小限に防ぐことができるんです。
分かりましたか?要は、バタフライ効果が極めて高い確率で発生してしまうのが警察業務。
どんな小さなことでも組織に乗せる訓練、そのために過誤報告があるとわたしは考えています。
どんなミスが過誤報告の対象になるの?
上でまじめなことを書いたのにこんなことを書くのは気が引けますが、非常にバカくさく笑えるようなものばっかりです。
いくつか例を挙げて紹介しましょう。
① 「担任教官ではない別な教官に叱られた」ので過誤報告にGO!
これが一番よくあるパターン。きついですよ、同じことで二重に叱られることになるんですからね。
② 「授業の忘れ物をした」ので過誤報告にGO!
③ 「寮の鍵をかけ忘れた」ので過誤報告にGO!
大体大きく分けるとこの3つの理由に集約されます。
まあ、その他にもかなり細かくて面白いのがたくさんありますので、この記事の最後に発表します。
過誤報告をしないとどうなるの?
例えば、上に書いたような「他の教官から叱られた」などという教官間の連絡を通して耳に入る可能性のあるものは、すぐ過誤報告に行っていないと隠したものととらえられ厳罰に処されます。
自分が失敗したところを同期が見ていたというものであれば、過誤報告に行かないと見ていた同期に突っ込まれたりチクられたりして、結局厳罰に処されます。
誰も見ていない場所で起きた失敗についても、良心の呵責に耐えきれず、自ら進んで過誤報告(この場合は懺悔に近い)に行く者がほとんどです。
なぜかというと、警察学校は恐怖政治です。恐怖で学生を支配していますので、学生が教官に洗脳されてしまうんですね。
「ちょっとしたことでも報告しないと後で大変なことになる」という思考が植え付けられてしまうんです。コワいですね。
過誤報告の罰則ってなに?
教官によっても変わりますが、過失によるミスを素直に申告した場合であれば、ミスをした理由を聞かれ「同じミスしないようにするにはどうするんだ?」「以後気を付けるように」と諭される程度で終わります。
が、故意によるものであったり、過失のミスを隠したりすれば、逆鱗に触れこれでもかってほど徹底的にシバき上げられます。
わたしの知っている過誤報告で叱られた最悪なケースを紹介します。
叱られた学生は、着校後数日の男子学生。
着校後数日ですから、当然先輩期生に指導を受けています。
ある日、その男子学生は自分が犯したミスをその先輩期生の指導によるものだと教官に申告してしまったんです。
要は、先輩期生の指導方法が悪いと。
事実を確認するも、先輩期生の指導方法に落ち度はなく、至って普通なものでした。
それを聞いたその男子学生の担任教官と先輩期生の担任教官はブチ切れ!
わたしは当時、その指導している先輩期生を束ねる立場だったので、間近で見ていましたが、いやあ・・・。
教官方は怒鳴る怒鳴る怒鳴る怒鳴り散らしてまた怒鳴る。
学生は泣く泣く泣く泣く泣きわめいた後更に泣く。
「帰れ」「辞めろ」「お前なんかいらない」「先輩期生に謝れ」
「帰りません!」「やらしてください!」「申し訳ありま・・・うぇーん!!!」
そんなのが延々と1時間くらい続きましたか。
あまりの教官方のブチ切れように、悪者にされた我々先輩期生も思わずその学生に同情しちゃいましたよね(笑)
その後数日すると自然と教官方の怒りも収まります。
結局その学生は、最後まで辞めずに勤め上げて無事卒業しました。
オモシロ過誤報告ベスト5!
第5位! 自室の鍵をぶっ壊して過誤報告!
これは、とある女子学生のお話。
学生寮には自分で保管しなければならない鍵があります。
この女子学生、自室の鍵穴に鍵を突っ込んで回したところ、金属疲労により「ボキっ」!!
真っ青になってそのまま教官室にダッシュ!!
自分の怪力で壊してしまったと正直に過誤報告!
調べたところ金属疲労によるものだったとわかったのですが、わたしは今でもその女子学生の怪力によるものだったと思ってます。
第4位! 部屋に服を脱ぎ散らかして過誤報告!
警察学校には月1回くらいのペースで、寮の共用場所や自室の中などの清掃と整理整頓の状況を細かく見て回る検査(具体的な検査の名前は各県によって違うので名前は伏せます)があります。
検査教官はかなり意地悪で、検査をしない日にわざと寮内に出入りして、検査をしてきたかのように装うんです。ダミーですね。
この検査で悪い結果が出ると、1か月間くらいの期間、連帯責任で何らかのペナルティを受けるんです。
なので、清掃や自室の整理整頓に学生はかなり気を使っているんです。
でも、とある学生が次の授業に間に合わず、着替えを自室に脱ぎ散らして次の授業に行っちゃったんです。
その授業終了後、その学生が寮に戻るときに検査教官が寮から出てくるのを目撃!
しかもその教官、その学生を見てニッと不敵な笑み。
真っ青になった学生は、そのまま教官室へGO!
着替えの時間が無くて脱ぎ散らかして授業に行ったことを過誤報告!
結局、その時の検査教官もダミーで、事なきを得ました。
第3位! 制服のボタンがぶっ壊れて過誤報告!
これはわたしの過誤報告経験です。
ある式典に学生の代表者として参加することになり、本番の数分前になった時のこと。
わたしは、ボタンにゆるみは無いか、制服は汚れていないかなどの身だしなみを確認していました。
制服の肩のボタンを回して確認していると、そのボタンが軸からボキッ!
・・・本当に真っ青になりましたよね。
周りの色が無くなるって、ああいうことです。
運良く隣に担任教官がいたのでその場で過誤報告!
バカたれアホたれ言われましたけど、結局式典に出ない人のボタンを借りて何とか事なきを得ました。
第2位! 教官の顔が面白くて笑っちゃって過誤報告!
教官の中には、しゃべり方や癖など、目を引く動作をする教官が必ずいます。
わたしが学生だった時、失礼ですけど面白い顔の教官がいたんです。
とある女子生徒はその日の教場当番。
教場当番というのは、授業準備の他にもその日一日の号令かけも行います。
夜間点呼の時。
点呼場に来たのはその面白い顔の教官。
それを見た女子生徒は、一人で大爆笑してしまい、申告ができません。
オモシロ教官に「なんで笑ってるんだ?」と突っ込まれても笑っている。
カミカミながらもなんとか申告し終え、翌朝一番で担任に過誤報告に行き、大目玉を受けましたとさ。
第1位! 靴下をはき忘れて過誤報告!
もうこれ、断トツです。
ある男子学生のお話。
朝起きると、すぐにグラウンドに出て朝点呼を行います。
起床ベルが鳴ってから、数分でグラウンドに全期生が集まります。
その男子学生は、その日に限って寝坊。
全力でジャージに着替えてグラウンドにダッシュ!
グラウンドについて気づいた!
「やっべ!靴下はいてねえ!!」
そのまま知らんぷりしときゃいいのに、靴下をとりに猛然と自室にダッシュ!
その間に点呼担当の教官が来て点呼開始。
申告人数と実際の人数が1人足りません。
ええそうでしょうとも。だって、その1人は靴下を取りに戻ってるんですから。
途中で戻ってきて人数がいることは証明されましたが、当然過誤報告行です。
「靴下をはいてくるのを忘れましたので、寮に戻ってとってきました!」
と、過誤報告して叱られてる男子学生の顔が今でも忘れられません(笑)
いかがだったでしょうか?
警察学校には、その時は怖いけどいずれ笑い話になるような面白い制度が結構あります。
何はともあれ、嘘はついちゃいけません。ミスをしたら正直に申告しましょう。
隠さない限り、教官方はわかってくれますから。
ただし!隠した場合は・・・わかってますね?
以上でーす!
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