
今回は、元POLICEMANであるわたくしけたろーが「飲酒運転」の種類について徹底解説いたしますよ!
普段、わたし達が「飲酒運転」と言ってるものは、実は二種類存在することをご存知でしょうか?
一つ目が「酒酔い運転」。
二つ目が「酒気帯び運転」。
今回は、この二つがどこがどう違って、どういう風な基準で「酒酔い運転」になり「酒気帯び運転」になるのか、罰則にはどのような差があるのかということなど、二つの飲酒運転の違いを徹底解説します!
難しい言葉は極力排除して、誰でも分かるように説明していきますよ~!
この記事はこんなお話
「酒酔い運転」とは?
「酒酔い運転」を一言で言い表すと、文字通り「お酒に酔った状態」で車を運転することです。
ね?とっても簡単でしょ?
よく、サラリーマンが酔っぱらって頭にネクタイをハチマキ代わりに巻いてるネタ、見たことありませんか?
こういうのです。
そうそう、こんなの。
こんな風に、お酒を飲んだがためにストッパーが外れて、意味わからんことをし始めたり、ろれつが回らなかったり、まっすぐ歩けない状態に陥っている状態で車を運転することを「酒酔い運転」と言います。
もう一つ例えるならば、居酒屋から出たサラリーマンが、鮨詰めを持って夜道をフラフラ千鳥足で歩いて、時折道端でキラキラをまき散らしながら家に帰っている様子を思い描いて下さい。
そう、その状態、まさに酒酔い!THE・酒酔い!
この状態を難しい言葉で「酩酊(めいてい)状態」と言います。
酩酊状態からさらに酔いの症状が進んで、まともに会話すら成り立たなくなったり、記憶があいまいになってきたりしている状態を「泥酔(でいすい)状態」と言います。
どちらの状態の時に車を運転しても、両方とも「酒酔い運転」に該当します。
酒酔い運転になるには、体内にどれだけのアルコールが入っているのかと言う事は関係ありません。
また、これは「酒酔い運転」「酒気帯び運転」ともに共通事項ですが、体内に入っているアルコールがお酒に由来するものか、それ以外の食品が由来するものかは関係ありません。別にどっちでもいいんです。
つまり、お酒を飲まなくても、例えば「洋酒入りのチョコレート」とか「酒粕」なんかを大量に食べた後に車を運転した場合でも「酒酔い運転」や「酒気帯び運転」となってしまいます。
さらにアルコールの摂取量については、極端な話、お酒を一滴しか飲まなかったけどフラフラに酔ってしまい、その状態で車と名の付くものを運転すればそれは立派な「酒酔い運転」です。
逆に言うと、ガンガンお酒を飲んでも全然酔っぱらわないような酒豪が、ガンガンお酒を飲んで全く酔っぱらわない状態で車を運転した場合は、それは「酒酔い運転」には当たりません。「酒気帯び運転」となります。
ちなみに「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」のどちらが罰則が重いかというと、そりゃもちろん「酒酔い運転」です。
酒気帯び運転もそうですが、酒酔い運転で事故を起こした場合、その致死率は圧倒的なものがあります。
とあるデータでは、酒酔い運転による交通事故の致死率は、酒酔い運転以外の交通事故の致死率よりも約17倍高いという結果も存在します。(警察庁公表:平成28年中の数値)
「酒気帯び運転」とは?
次に「酒気帯び運転」についてです。
「酒気帯び運転」とは、「お酒に酔っている状態ではないけど体の中にアルコールが入っている状態で車を運転すること」です。
酒酔い運転では体内に入っているアルコールの量は全く関係ありませんでしたが、「酒気帯び運転」の場合はそうはいきません。
しっかりと「呼気1リットル中のアルコール含有量0.25㎎以上」「同0.15㎎以上0.25㎎未満」と二段階で規定値が決められていて、検査をして出た結果によって罰則が異なってきます。
「飲酒運転」と言われる行為の90%以上がこの「酒気帯び運転」に該当します。
平成29年の犯罪白書によると、全国の飲酒運転検挙人数26423人中、実に98%に当たる25864人が酒気帯び運転となっています。
酒酔い運転はたった2%しか存在しないんですね!
「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の罰則等の比較
それでは、「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の罰則と違反点数、欠格期間を比較してみましょう。
違反種別 | 罰則 | 違反点数 | 欠格期間 |
酒酔い運転 | 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 | 35点(一発で免許取り消し) | 3年 |
酒気帯び運転(0.25㎎以上) | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 | 25点(一発で免許取り消し) | 2年 |
酒気帯び運転(0.15㎎以上0.25㎎未満) | 同上 | 13点(一発で免許停止) | 免許停止90日 |
このデータは、あくまで「酒酔い運転」「酒気帯び運転」で検挙された場合のデータです。
「酒酔い運転」「酒気帯び運転」で交通事故を起こしてしまったりした場合は、悪質さの度合いに応じて罰則や違反点数が加増されます。
欠格期間というのは「免許を取り消された人が、免許を再取得できるまでの期間」です。
また、欠格期間については、過去に交通前歴のない場合のデータです。
過去に交通前歴があったりした場合などは、複雑な条件の下でさらに欠格期間が加増されたりします。
「酒酔い運転」か「酒気帯び運転」なのかはどうやって判断する?
違反者が「酒酔い運転」に当たるか「酒気帯び運転」に当たるかを判断するのは警察官が判断することになります。
まず、どちらに当たろうが関係なく行われるのは「呼気検査」つまり「飲酒検知」です。
「呼気検査」とは、警察官が持っているストロー付きの特殊な袋に息を吹き込み、検知管と言うガラス棒の中に呼気を通して呼気中のアルコール濃度を検査をすることです。
まず、警察官は紙コップにただの水を入れ、違反者に口の中をうがいするように促します。
違反者に水でうがいをさせることにより、口の中に付着したアルコールを落とさせ、純粋な呼気中のアルコールを検出できるようにします。
次に、ストローと呼気逆流防止弁が付いた袋にめいっぱい呼気を吹き込ませます。
次に、警察官が違反者の目の前で検知管というアルコール検出用のガラス棒の両端を割ります。
ガラス棒の片方を袋のストロー穴に、もう片方を注射器のような吸引機につなぎ、吸引機を引っ張ります。
すると、袋の中から違反者の呼気が吸い出され、ガラス棒の中の薬品と反応してアルコール含有量を測定する、という仕組みです。
決められた時間、袋中から呼気を吸い出しガラス棒の中で反応させた後は、ガラス棒の先端の袋を外し、普通の空気を流します。
これにより、ガラス棒の中でのアルコール反応が止まります。
アルコール反応が止まったら、違反者の面前でガラス棒の両端にゴム栓をして、違反者の面前で所定の封筒に入れます。
封筒には、違反者に「水でうがいした」と自筆で書かせ、署名指印させることでアルコール検出の証拠価値を担保します。
警察官は、この一連の流れを必ず「違反者の面前で」行います。
こうしないと違反者に「警察官が勝手にアルコールを吹き入れた」と意味不明な言動をされてしまう可能性があるからです。
この「呼気検査」を拒否することはできません。
拒否した人や妨害した人は「飲酒検知拒否罪」という罰則規定がありますので、検挙対象となります。
過去には「飲酒検知拒否罪」で現行犯逮捕された被疑者もいます。
で、この呼気検査中にも警察官は違反者によく話しかけます。
その会話の中で、違反者が正常に話せるか、酩酊状態ではないかどうかを確認するのです。
もし、その検査中に少しでも酩酊状態・泥酔状態の兆候があった場合は、次の検査に移行します。
酩酊状態が認められた場合には、次に歩行検査と所定の用紙を用いた受け答えの検査をします。
歩行検査とは、違反者がまっすぐ歩けるかどうか実際歩かせる検査です。
ここでよろめいたり、大幅に蛇行したりした場合は酒酔い運転の可能性大と判断されます。
それと同時に実施されるのが所定の用紙を用いた受け答えの検査です。
警察官が持っている所定の用紙に書いてある超簡単な質問を違反者に行います。
例えば「あなたの名前は何ですか」という質問があります。
これに対し「けたろーと申します」と答えれば、警察官はその用紙に「けたろーと申します」と記載します。
でも、「うるせーバカ野郎」と答えれば、警察官はその用紙に「うるせーバカ野郎」と書きます。
つまり、「問:あなたの名前は何ですか」「答:うるせーバカ野郎」となるわけですね。
こうなると質問に正しく答えられているという状態ではありませんので、酒酔い運転の可能性大、となってしまうんですね。
以上のとおり、呼気検査はもちろん、歩行検査や受け答えの検査を用いて違反者を「酒酔い運転」か「酒気帯び運転」かを判断するんです。
「酒酔い運転」「酒気帯び運転」と断定された場合、どうなるの?
ええ、そうですね~、酒酔い運転の場合はまず間違いなく「逮捕」でしょうね~!
現行犯逮捕や通常逮捕など、ありとあらゆる手段を用いて違反者の身柄を確保しようとするでしょうね~!
酒気帯び運転の場合は・・・逮捕されるか赤切符(交通切符)を切られるかはその事案次第でしょうね~。
仮に逮捕されずに赤切符となった場合でも、運転免許証は警察官に没収されてしまいますけどね~。
代わりに、運転免許証の代わりとなる切符のペラ紙を渡されますけどね~。
ちなみに、逮捕されて有罪が確定した場合はもちろん、赤切符を切られて罰金刑が確定したりしても、見事に「前科」が付きます。
さらに、「酒酔い運転」「酒気帯び運転」問わずに、自損事故でも起こそうもんなら、確実に逮捕ですね。
ましてや人を死なせてしまったり、重傷を負わせてしまった暁には、違反者の人生、ゲームオーバーになっちゃいますよ。
アルコールは検出されたけど、基準値に満たなかった場合はどうなるの?
これは往々にしてよくあるパターンです。
まあ、違反者にとっては単純に運が良かったとでも言いますか。
酒酔い運転には当たらないけど、酒気帯び運転の基準値となる「呼気1リットル当たり0.15㎎」未満だった場合がこのケースに当たります。
当然、罰則は何もありません。基準値に達していませんからね。
でも、それで「はいさようなら」ですかと言われればそうじゃありません。
わたしが現役の時は、こういう輩からは「誓約書」を自筆で書かせていました。
こういう内容です。
「わたしは今後、お酒を飲んで車を運転することはしません。 平成〇年〇月〇日 氏名 名無しの権兵衛 ㊞」
こういうのって、交通課の格好のカモになるんですよね。
誓約書って、単に誓約させただけでは終わりませんよ?
よく考えて下さいよ?
警察署交通課の役目の一つに、交通違反を取り締まることがあるのはご存知の通り。
過去に飲酒運転をしたことがあるモラルが低い人間は、よほど反省しない限り必ずまたやります。
それを交通課の人間は知っています。
・・・となると、交通課が次にとる行動は?
わたしが交通課の人間だったらこう考えますね。
「アイツ、また飲酒運転やるんじゃねえか?今日は金曜日だし、ちょっと様子見に行ってみるか。あ、案の定車で居酒屋方向に向かってったな?あ、やっぱり入っていった!・・・よし、出てきたな!ちょっと職務質問だ!」
一度「もうやりません」って誓約書を書いた人間が再度飲酒運転をする。
もう、警察は赤切符で対応なんて生易しい対応はしませんよ?
そう、逮捕です逮捕。飲酒運転容疑で現行犯逮捕です。
「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の違い、よく分かってもらえたと思います。
結局、どちらのケースでも違反者の人生はゲームオーバーになりかねませんね。
世間一般で言われているとおり、飲酒運転はダメです!
お酒が好きで、日々車を運転する人は、車の中に一台アルコールチェッカーを常設しておくことを強くお勧めします。
お酒を飲んだ次の日、仕事に行く前は必ずアルコールチェックをしましょう。
二日酔いでアルコールが残っている時に運転しても飲酒運転になりますから。
以上でーす!