
あなたは、自分の子供(およそ10歳までの乳幼児・児童)を車に乗せるとき、チャイルドシートを使用しているでしょうか?
チャイルドシートは、小さい子供の体をがっちりと固定し交通事故の衝撃から子供を守るために、道路交通法にてその着用が義務付けられています。
そんなチャイルドシートですが、子供が通常のシートベルトが問題なく付けられる体格になるまでの使用が推奨されており、特に6歳未満児の未着用は原則として違反であると明記されていることをご存知でしょうか?
仮に違反した場合も罰則規定がないので刑事罰の対象にはならない(犯罪ではない)のですが、違反点数は付与されてしまいます。
そんなチャイルドシートの違反・正式名「幼児用補助装置使用義務違反」について、元POLICEMANであるわたくしけたろーが実例を交えて詳しくお話をしていきます。
この記事はこんなお話
チャイルドシートの定義
チャイルドシートとは正式名を「幼児用補助装置」と言い、道路交通法第71条の3 第4項において、
幼児を乗車させる際座席ベルトに変わる機能を果たさせるため座席に固定して用いる補助的な装置であつて、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合し、かつ、幼児の発育の程度に応じた形状を有するもの
(引用:道路交通法第71条の3 第4項)
と明確に規定されています。
説明するまでもありませんが、チャイルドシートとはシートベルトの子供バージョンです。シートベルトに替わる車両設置型の乳幼児用小型座席とでも言えるでしょうか。子供用品店で「チャイルドシート」として販売されている物がこれに該当します。
なお、上記道交法文中の「幼児の発育の程度に応じた形状を有するもの」とは、次のような区分が目安とされています。
乳児用シート | 体重10㎏未満用で、新生児から1歳ころまで |
幼児用シート | 体重9-18㎏以下用で、1歳から4歳ころまで |
児童用シート | 体重15-36㎏以下用で、4歳から10歳ころまで |
法的根拠
違反名称 | 幼児用補助装置使用義務違反 |
法的根拠 | 【道路交通法 第71条の3 第3項】
運転者は、チャイルドシートを使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない。 【上記の除外理由】 1 シートベルトを適切に着用できる座高の幼児にシートベルトを着用させている場合。 2 傷病、障害の療養上や健康保持上、チャイルドシートの使用が適当でない幼児を乗せる場合。 3 構造上、チャイルドシートを固定することができない座席に幼児を乗せる場合。 4 固定できるチャイルドシートの数を超えた幼児を乗せる場合(乗車人員制限内の員数で、固定できるチャイルドシートに乗せることができる人数以外の幼児に限る)。 5 著しい肥満などの身体的理由により、チャイルドシートを適切に使用させることができない幼児を乗せる場合。 6 チャイルドシートを使用したままでは、その幼児の授乳などの日常生活上の世話を行うことができないとき。 7 乗合バスまたはタクシーの運転手が、旅客である幼児を乗せる場合。 8 国土交通大臣の認可を受けた自家用バスの運転者が、その運送のため幼児を乗せる場合。 9 応急救護のため、医療機関や官公署などに緊急搬送する必要がある幼児を、その搬送のために乗せる場合。 |
切符種別 | 点数切符(白切符) |
罰則 | 無し |
反則金 | 無し |
違反点数 | 1点 |
備考 | 幼児とは、6歳未満の者をいう。 |
子供をチャイルドシートに座らせていないと、交通事故の時どうなるの?
乳児は基本的に自分で自分の体を支え続けて何かに掴まり続けるということができません。幼児であれば多少はしがみつくことができますが、力が弱いため少し大きな力が加わった場合、すぐに引きはがされてしまいます。
万が一、チャイルドシートに子供を座らせておらずに交通事故を起こしてしまったり、巻き込まれてしまった場合、事故の衝撃によって、乳幼児は大人以上に簡単に吹き飛ばされます。
乳幼児は大人と比べて体や頭が柔らかく全てが未発達です。また、乳児は首が座っていないと事故の衝撃によって頸椎を損傷してしまう危険性があることはもちろん、非常に重篤な障害がその後一生にわたって残ってしまう可能性だって十分あります。
もちろん、命を落とす危険性も十分すぎるくらいあります。
大人でさえ簡単に吹き飛ばされる交通事故の衝撃です。乳幼児が耐えらえるはずがありません。
そんな乳幼児を専用に守る役目を持つものがチャイルドシートなのです。
違反になるのはどんなとき?
6歳未満の乳幼児をチャイルドシートに座らせていない場合、後述する除外理由を除き、原則違反になります。
わたしが現職時代に取り締まった例を挙げると、乳幼児を乗せているのにチャイルドシートを搭載していなかった場合や、子供がチャイルドシートに座るのを拒むのでお母さんがずっと抱っこしていたという場合、チャイルドシートを搭載しているが、子供が抜け出て車内で遊んでいて保護者が放任していた場合などが挙げられます。
警察官が違反として認定した場合は、点数切符(通称「白切符」)の交付対象となり、違反点数1点が付与されます。
違反点数は付与されますが、点数切符には刑事罰の罰則規定がありませんので、たとえ否認をしても交通反則切符(通称「青切符」)のように刑事罰の対象として問疑されることはありません。
こんな時はチャイルドシートに座らせていなくても違反にならない(除外理由)
チャイルドシートの使用義務には結構な数の除外理由があります。
つまり、除外理由のいずれかに該当する場合は、たとえチャイルドシートに座らせていなくても違反にはなりません。
幼児が大人同様にシートベルトを適切に着用できるとき
子供の座高が高かったり、体が大きかったりして、幼児が大人と同様にシートベルトを着用できる場合で、子供がきちんとシートベルトを締めている場合は違反となりません。
「きちんとシートベルトを締められている」という判断基準となるのは、保護者の主観によるものではありません。警察官などの第三者が客観的に見て、子供の身体にシートベルトがきちんと密着し、大人がシートベルトを締めている時と同様の効果を発揮しているか否かで決められます。
病気・けが・傷害の療養上や健康保持上チャイルドシートの着用が適当でないとき
子供が患っている病気やけがまたは障害を持っており、その治療・療養・健康保持上でチャイルドシートを着用していると悪影響が出るなど、チャイルドシートの着用が妥当ではないと認められるときは、チャイルドシートに座らせていなくても違反ではありません。
子供がこのような状態であるときに万が一警察官に違反を取り締まられそうになった場合は、包み隠さず事情を説明し、理解を求めましょう。
もちろん、それを証明する外見的根拠は(負傷部位や、病気関連の書類・薬袋等の証明できるもの)はあった方がいいです。そうでないと、第三者である警察官が認識できませんから。
チャイルドシートを固定することができない座席に幼児を乗せる場合
昔の車で、後部座席にシートベルトそのものが無かったり、例えば幼稚園バスでシートベルトの備え付けが無い場合などの理由のある車に子供を乗せる場合は、違反にはなりません。
車内に固定できるチャイルドシートの数を超えた幼児を乗せる場合
その車の乗車定員を超えない人数で、車内に固定できるチャイルドシートの数を超えた幼児を乗せる場合は違反にはなりません。
乗車定員は子供3人で大人2人分で換算して計算します。
この除外理由の場合、違反には咎められませんが、親としての子供への安全責任を果たすのであれば、使用する車をもう一台増やし、子供をきちんとチャイルドシートに乗せきることができる状態を作ることが必要であると考えます。
違反か否かで判断し、子供の安全をおろそかにするなど、滑稽です。
チャイルドシートを適切に着用できない幼児を乗せる場合
例えば、子供が著しい肥満でチャイルドシートを適切に着用できない場合などは、チャイルドシートに座らせていなくても違反にはなりません。
ただ、これも子供の安全性を考えた場合、一回り二回り大きなサイズのチャイルドシートを設置すれば子供の安全が確保できるのであれば、大きなチャイルドシートを用意してそれに座らせるのが子供の安全策としては妥当です。
チャイルドシートをしたままでは日常生活上の世話を行うことができないとき
乳幼児のオムツ交換や授乳は、チャイルドシートに乗せたままではできません。このような場合は一時的にチャイルドシートを解除し、世話をしても良いとされています。
どの程度の内容が日常生活上の世話となるか否かについては、わたしの現職時代の取り締まり体験から申し上げますと、子供が泣き止まないから抱っこしていた、または子供がチャイルドシートに座りたがらないから、座らせずに車内で遊ばせていた、と言うのは「日常生活上の世話」には当たりません。
どの程度までが「日常生活上の世話」に当たるかは「子供の生理的現象」に対して世話をすることまでが妥当と考えるべきです。
ただ、保護者の子供に対する安全責任を果たすためならば、例え乳幼児のオムツ交換や授乳時であったとしても、「違反じゃないから」と安易にチャイルドシートを解除するのではなく、きちんと停止した後に行った方がいいと考えます。
そうでないと、万が一世話の最中に交通事故にでも遭えば大変なことになってしまいます。
バス・タクシーが幼児のお客さんを乗せるとき
公共バスやタクシーが幼児のお客さんを乗せるときは、チャイルドシートを付けなくても違反ではありません。
国土交通大臣の認可を受けた自家用バスに幼児を乗せて運送する場合
「国土交通大臣の認可を受けた自家用バス」とは、路線バス事業が成り立たない過疎地域で、そこの自治体が国土交通大臣の認可を受けて、独自に有償で過疎バスを運行させる場合などがこれに当たります。
そんなバスに幼児を乗せる場合は、チャイルドシートを着用していなくても違反にはなりません
救急車等で幼児を緊急搬送する必要がある場合
救急車等で幼児を病院等の然るべき場所に緊急搬送する必要がある場合は、子供にチャイルドシートを着用していなくても違反にはなりません。
おわりに
チャイルドシートを着用することにより、着用していない場合と比べてかなりの安全効果が発揮できるからこそ、チャイルドシートの着用が義務付けられているということは言うまでもないでしょう。
子供を乗車させて車を運転する保護者に言いたいことは、「違反かどうか」でチャイルドシートに座らせるか否かを判断するのではなく、常に子供の安全を考えて判断を下してもらいたいと思います。
「違反かどうか」でチャイルドシートに座らせるか否かを決めるのは、それは単なる保護者のエゴであり、傍から見ていてこれほど滑稽なことはありません。
つまり、小さな子供を車に乗せるとき、原則としてチャイルドシートに座らせるという選択肢以外取りようがないはずなのです。
どうか、保護者の皆様には子供の身の安全を十分に考えていただき、適切な判断を下していただきたいものです。
以上でーす!