
元POLICEMANであるわたくしけたろーの願いを込めて、四部構成でお送りしている「あなたが知るべき、あおり運転者の末路」シリーズ。
前回は、第一部「命の代償」編をお送りいたしました。
人間誰しも命は一つだけしかなく、どんな理由があれど他人の命を奪う権利など無いということが十分にわかっていただけたことと思います。
今回、つまり第二部「社会的な破滅」編からは、あおり運転をして相手の命を奪ってしまうような大事故に発展してしまった場合、その後の人生はどうなるのかということをシミュレーションしていきます。
事実、2017年6月に神奈川県にある東名高速道路で発生した、石橋和歩被告のあおり運転が発端となって発生した交通死亡事故。
事件から約1年6か月後の平成30年12月14日の金曜日、横浜地検は、石橋和歩被告に対し懲役18年(求刑懲役23年)の実刑判決を言い渡し、この事件の被害者4人(死亡2人、負傷2人)が死傷した原因は、石橋被告によるあおり運転が密接に関連しており、妨害行為によって実現したものであると判断されました。
もし、あなたがあおり運転をした結果、相手の命を奪ってしまうような大事件に発展した場合、その後の人生はどうなってしまうのでしょうか?
背筋が凍る思いがするかもしれませんが、それほどあおり運転による重大事件は恐ろしく、やっちゃいけないものなんです。
では、お話を始めます。

誰でも「あおり運転」をしてしまう可能性はある
詳しいお話をする前に、知っておいていてもらいたいことがあります。
それは「車を運転する人なら、誰でもあおり運転をしてしまう可能性がある」と言う事です。
あなたは「わたしは絶対にしない!」と言い切れますか?
例えば、飲酒運転であれば「お酒を飲んで」車を運転する、と言う事が必要になります。
このご時世、お酒を飲んで車を運転しようとする人など、ドライバー全体から見ればごくごく少数です。
でも、あおり運転は違います。
飲酒をしていようがしていまいが、免許を持っていようと無免許であろうと、天才であろうとアホであろうと、「車を運転している人全員」があおり運転をしてしまう危険性を秘めているんです。
もちろん、この記事を書いているわたしもそうです。
何故かというと、あおり運転と言うのは主に「自分の怒りの感情」「身勝手な感情」「歪んだ思考」が原因となって行われるものですから。
感情や思考というのは誰にだってあります。
だからこそ「感情や思考に負けない自己抑制」が車の運転では必要となってくるんです。
つまり、車の運転中に「イラっ」として相手に何かしたくなるという感情を消さなければならないんです。
石橋被告は、そのことが全くできていなかったようです。
一日に何度も何度もあおり運転をして車を停め、何度も何度も警察沙汰になって、当時の交際相手が疲弊しきっていたという記事が出回っているくらいですから。
もっと知っておいてもらいたいのは、今の日本の運転免許証の発行システムには、こういう「性格的に危険性を秘めている人」にも運転免許証を発行している事実がある、ということです。
つまり、石橋被告は氷山の一角であって、日本中には危険な思考を持ったキチガイドライバーがまだまだごまんといるということです。
お待たせいたしました。
それでは、あおり運転をして相手の命を奪ってしまうような大事件を起こしてしまった場合、その後の人生がどうなってしまうのかについて、【社会的な破滅】という観点からお話していきましょう。
破滅その1:刑事罰
過失により交通事故を引き起こし、その結果相手の命を奪うことになってしまった場合は、通常「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(略称:自動車運転死傷行為処罰法)」の中に定義されている「過失運転致死傷罪」によって処罰されることになります。
ただし、あおり運転のような「妨害運転」の結果、相手が事故を起こしたり、事故に巻き込まれたりした場合は「過失」ではありませんよね?
明らかに意図的に相手の運転する車を妨害し、その結果事故に巻き込んだり、事故を誘発させるわけですから、「過失」と同レベルとして扱えるはずがありません。
この場合は、自動車運転死傷行為処罰法の中の「危険運転致死傷罪」に当てはめて、犯人を処罰することになります。
2017年6月、神奈川県で起きた石橋和歩被告による事件のケースもまさにこれです。
ちょっと罰則を比べてみましょう。
罪 状 | 罰 則 |
危険運転致死罪 | 1年以上の有期懲役 |
危険運転致傷罪 | 15年以下の懲役 |
過失運転致死傷罪 | 7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金 |
気付いたことはありませんか?
殺人罪などでよくある「死刑または無期懲役」が無いんです。
過失運転致死傷罪はともかく、危険運転致死傷罪ですら刑期を終えれば刑務所から出所できるんです。
今回の石橋和歩被告には、横浜地検から懲役18年(求刑懲役23年)の実刑判決が下りました。
石橋被告はまだ26歳とかそこらの年齢ですよ?
まだ若い石橋被告の生きてきた人生とほぼ同等の刑事罰が求刑され、若干短くはなりましたが、18年もの実刑判決が下っているんです。
石橋被告に下った、懲役18年という実刑判決をどちらも控訴・上告せずに裁判が結審したとして、刑期満了で石橋被告が出所できるのが、彼が44歳の時。
今の刑務所では、社会復帰のためのカリキュラムなんかを取り入れて受刑者に受けさせているみたいですが、正直、石橋被告レベルの大事件を起こしてしまった場合は、何の役にも立ちません。
その理由は読み進めればわかります。
破滅その2:行政処分
あおり運転によって他人の命を奪うほどの大事件を引き起こしてしまった犯人に科せられるのは、刑事罰だけではありません。
「運転免許取り消し」はもちろん、運転免許を再取得することができない「欠格期間」が相当年数科せられることになります。
罪 状 | 違反点数 | 欠格期間 |
危険運転致死罪 | 62点 | 8年間 |
危険運転致傷罪(治療期間3か月以上又は後遺障害) | 55点 | 7年間 |
危険運転致傷罪(治療期間30日以上) | 51点 | 6年間 |
危険運転致傷罪(治療期間15日以上) | 48点 | 5年間 |
危険運転致傷罪(治療期間15日未満) | 45点 | 5年間 |
例え刑期が終わり、欠格期間も過ぎ、いざ免許を再取得しようとしても、その犯人があおり運転で過去に人の命を奪った経歴があるということは、しっかりと記録されています。
免許を発行する「免許センター」は警察の管轄です。
そんなもの調べれば一瞬で分かります。
あなたがそんな免許センターの職員だったらどうでしょう?
一度でもそんな重大事故を引き起こしてしまった人に、再び免許を発行したいと思いますか?
わたしなら思いません。
例えその犯人が自動車学校の卒業試験に合格し、免許センターの学科試験を満点突破したとしても、免許を再発行したくありません。
そもそも、車による大事件を引き起こしておいて、再度免許を取って車を運転しようだなんて思わないでいただきたいものです。
車で大事件を起こした人は、車を運転するなと言いたい。
事件後、一生涯車を運転しないと決めたと仮定した場合、たとえ刑期を終え出所したとしても、その行動範囲は圧倒的に狭くなり、移動手段は公共交通機関やタクシーのみになります。
・・・でも、それらすら乗れるかわかりませんよ?
被害者遺族に対する損害賠償の支払いがあるんですから。
破滅その三:一生かけても支払いきれないほど高額な損害賠償請求
「あおり運転」という、自分の感情に任せて車を使って暴れまわり、その挙句に他人の命を奪うような大事故を起こしてしまった場合、刑事罰や行政処分だけでなく、金銭的な責任も同時に発生するのは言うまでもありません。
被害者遺族に民事訴訟を起こされ、損害賠償請求をされれば、最悪ウン千万から数億単位で請求され、まず間違いなく支払い判決が下ります。
・・・でも、どうやって支払うんでしょうね?
だって、事件の当事者である当人は、刑務所の中。
そうか!配偶者や当人の親や兄弟、親戚が支払うんでしょうか?
ここまでくると、もはやこの事件が自分一人の責任で終わらなくなるということがよくわかるはず。
事件の代償の一部を肩代わりさせられ、金銭的に疲弊した犯人の身近な人たちは、その後どうやって生きて行けばいいんでしょう?
それが、あなたの家族だったらどうしましょう。
考えるだけで背筋が凍りますね。
破滅その四:繰り返されるメディアによる事件の報道
あおり運転により交通死亡事故を発生させた場合、マスコミが黙っているはずはないですよ?
アフリカにいるハイエナのように事件の臭いを嗅ぎ付け、わんさか寄ってきますよ。
連日のように、犯人が拘留されている警察署前や犯人の自宅付近から中継が入り、朝のワイドショー、昼のワイドショー、日曜午前のワイドショーで大々的に取り上げられ、新聞はもちろん、ネットニュース、SNSでの拡散、犯人の自宅住所の特定、学生時代の顔写真、卒業文集の拡散・・・あれ?
似たような状況になっている事件、ありますよね?
そう、2017年6月に神奈川県の東名高速道路で発生した、石橋和歩被告の事件。
今まさにそんな感じでしたね。
彼だって、事件を起こす前まではただの一般人。
誰も注目している人はいませんでしたが、事件後一変しましたね。
だって、その事件が起きたせいでわたしやあなたは石橋被告を知っているんですから。
そんな報道が、「事件発生直後からしばらくの間」「初公判から判決まで」「控訴・上告」「刑確定」など、事件に関する何らかのアクションがあるごとに取りざたされます。
それだけじゃありません。
インターネットの世界に一度流れた事件の情報、犯人の顔、その他の情報は、本人が望んでも絶対に消し去ることができません。
いつまでもその名前で検索を掛ければ事件の情報が出てくるようになります。
Wikipediaにも登録されてしまいます。
つまり、いつまでたっても世の中から忘れ去られてもらえないんです。
破滅その五:職場を解雇され、職を失う
あおり運転で大事件を起こした暁には、まず真っ先に職場を解雇されるでしょう。
官民を問わず、組織と言うものはイメージが全てです。
犯罪を犯した社員を処罰せずに継続雇用していたとなれば、その組織の信頼性に直結します。
誰にも知られないような軽微な犯罪ならともかく、人の命を奪ってしまうような悪質な事件を起こした場合、まず間違いなく解雇です。
「懲戒免職」だった場合、それまで何年勤めていようが、退職金は出ません。
そりゃそうです。
クビになったんですから。
もし、刑期が終わって社会復帰しようとしても、ネット社会が発達した現代、今回の記事は必ずその時まで残り続けます。
記事どころか、今回の場合はかなりの数の顔写真まで出回っています。
石橋被告が出所したとしても、その後の社会復帰には想像を絶する困難が伴うことは間違いありません。
そして、これから同様の事件を起こしてしまった人も同様の状態になります。間違いなく。
おわりに
あおり運転により大事件を起こしてしまった犯人には、「刑事罰」「行政処分」が科せられ、高額な「損害賠償請求」によって全財産を失い「メディアの報道」によって日本中に一気にその名が知れ渡ることとなり、もちろん「会社もクビ」になります。
どうですか?
恐ろしいですか?
でも、これだけで終わると思ったら大間違い。
これはあくまで犯人の周りに起こる現象の一部にすぎません。
被害者側の目に見えない「怒り」「苦しみ」「恨み」「憤り」と言ったものが、さらに犯人に降りかかってくることになります。
その話は、第三部【末代までの恨み】編でお届けすることにしましょう。
では、また次の記事でお会いしましょう。